Rest of my Prince
入院中、玲くんが買ってくれた金緑石。
実は久遠の術で砕けてしまったんだ。
後で久遠に聞いたら、平然とそう言われて。
玲くんはいいよ、と笑ってくれたけれど。
高価なものなんだし、折角の玲くんのプレゼント…あたしは笑って済ましたくない。
煌がくれた首飾りも砕けてしまって、奴には一応…格好いいと思われる服をプレゼントした。
凄く高かったけれど、皆に得意げに自慢する煌を見てれば、プレゼント大成功だって嬉しくなってしまう。
櫂は…今忙しそうだから、また今度に。
身体を張って助けてくれた桜ちゃんへと、贈った手作りベアも凄く喜んで貰えてるようだし、だから次は玲くんにプレゼントしたいの。
だからね、日頃一緒の行動をしていない玲くんと、2人にして貰いたいの。
感謝の気持ちを、改まってちゃんと伝えたい。
その機会は、あたしのテスト結果にかかってる。
今では弥生も由香ちゃんも、あたしの気迫に押されて家に来なくなった。
「なあ…芹霞…。一緒にDVD見ねえ? これお前が見たいって予約してた…」
「そんなの後よ後!!!」
同居している橙色のワンコは、影から寂しそうにあたしを見ているけれど、あたしは無視を決め込んだ。
あんたとはいつも一緒にいけるけれど、テストは1回だけなんだから。
最近…煌の犬耳が垂れている。
奴はきっとそのうち耳を伸ばしてウサギとなり、"ウサギは寂しいと死んじゃうんだ"とか、部屋の隅で丸まりながら言い出しそう。
うう、それだけはご勘弁。
あたしそういう…震える動物に弱いから。
しかし――
あたしこんなに頑張っているのに、どうして煌は他人事なんだろう。
「あんたも試験なんだよ?」
「諦めてるし…」
その物言いにカチンとくる。
「煌!!! あんた諦め早すぎなんだって!!! もがけ!!!」
とうとう鉛筆の手を止めて、あたしは煌の胸倉掴んで叫ぶ。