Rest of my Prince
「そんなことないでしょ? 玲くん一度だって、その言葉使ってないよ?」
「だけど玲、お前が頑張れば頑張る程嬉しそうだろ?」
あたしは頷いた。
「凄い…応援してるだろ?」
「そりゃあ優しい玲くんだもの」
「ああ…玲も報われねえよな」
「???」
「玲から、告られたんだろ…お前」
褐色の瞳が細められる。
「でも玲くん…大人の余裕っていうか、いっつもそんな感じであたしからかうし。からかう頻度は多くなったけど、言動はあんたと違ってさらりとしていて…正直、何処まで冗談で何処までが本気か判らない。
本当の"玲くん"見せてもらえてないしなあ…。
告られた…というか、あれは状況的に必然な、あの場限りのような気もして。大体玲くんみたいな人が、こんな恋愛オンチの小娘相手にするはずないって気持ちの方が強い。
嫌われてはないと思うよ? だけど…前よりマシになったとはいえ…まだ何処か一線引いているでしょう、玲くん。それがじれったくってよそよそしくて、何とかしたくなる。もっと踏み込んでくれてもいいのに」
「……」
「もう少し楽になってもいいと思うんだよね、あたし。玲くん、苦しそうに思えない?」
煌は橙色の頭をがしがし掻いた。
「お前が沢山いればな…心から応援してやれるのに」
「は?」
「玲のこと」
「????」
「……なあ、俺は?」
「へ?」
「俺とはずっと"おでかけ"したくねえの?」
「だから煌とはいつも…」
「日常の延長じゃなく、"特別"」
あたしは目を細めた。
「いつも一緒にいるのに、あたしと"おでかけ"して"特別"に思えるの?」
褐色の目がいら立ったように揺れる。
「俺…好きだっていってんだろ!!?」
煌が爆ぜ――
突然の怒声に驚いたあたしは、後方に転びそうになり…我に返ってくれたようだ。