Rest of my Prince
 

好き。


あたしだって煌が好きなんだけれどな。


「どうすれば、意識させられるのかな…。お前から動いてもらえるのかな。この家にいる限り駄目なのかな…。もっと頑張り見せることが必要なのかな…」


段々と声が小さくなってくる。


「よし。芹霞」


何か閃いたのか、突如合わせられた瞳がきらきらと瞬いた。


「俺も勉強頑張る。俺が8割取れたら、お前がどんな点数取ろうと関係なく…俺と"おでかけ"だ。お前が9割とっても、俺が8割とれれば玲との"おでかけ"は無効!!」


「はあ!? あんた何勝手に!!! しかもあたし9割なのに、あんた8割って何よ!!?」


「仕方ねえだろ、俺の方がお前より馬鹿なんだから」


「威張り腐って言うな!!! …っと、それあたしの参考書!!!」


「ケチケチすんなよ。俺との"おでかけ"かかってんだから、俺もがり勉になってやる。俺だってな、高校受験に合格できる"やれば出来る子"なんだ!!!」


「補欠合格が何を偉そうに。でもま…煌は確かに"やらないだけの残念な子"だから、やる気だせば可能かも…って!!! じゃああたしと玲くんのおでかけどうすんのよ!!?」


「ああ、俺に話しかけるな。ええと…こここれを代入して…、な、芹霞。ここ判らないから教えろ」


「はあ!? あたしが教えるの!!?」


「家にはお前しかいねえんだから!!! 正直、櫂は怖んだよ。あいつスパルタだから…」


「その櫂のおかげで合格したくせに何を…。じゃあ玲くんに教われば?」


「玲はさ…表情と言葉が一致しねえから。にっこり笑って、容赦なく俺を絶望の底に沈めるような気が…」


"えげつねえ"


煌は、顔を歪めさせた。



「じゃあ桜ちゃんは?」


「お前、俺殺す気か!!? 1度でやらなきゃ俺死ぬぞ!!?」


「…はあ、その捨てられた子犬の目、やめてくれる? 判ったから。あたしが教えるから。…本当、教えて貰いたいのはあたしなのに、どうして入院しないで通学してた煌に、あたしが教えることになったんだろ」


あたしは項垂れた。

< 85 / 235 >

この作品をシェア

pagetop