Rest of my Prince
■奪還

├前編

 櫂Side
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「カラオケ行きたい」


芹霞と煌が同時に言った。


この2人は、往来でよく些細なことから喧嘩を始めるけれど、今回ばかりは煌も引かず、何故…そんな結果になったのか。


「今回はどうしたんだ、お前達…」


「もう少しで、桐夏祭だよね。今回は、五反田にある姉妹校…桜華学園20周年記念で、共同開催となるから規模が大きくなるでしょう? 生徒には当日まで内緒で芸能人が来るって噂じゃない。櫂も誰来るか知らないんでしょ?」


「ああ、そういうのは生徒会の役目だし…俺はノータッチだ。

で、桐夏祭が何の関係ある?」


「その芸能人…『Zodiac(獣帯)』の噂があるの。顔よし歌よしの…あたしが大好きな3人組を、煌が『あんな陳腐な歌い手』って馬鹿にするの」


正直――Zodiacなんていうものは俺は知らない。


「だってあんなの"男"じゃねえよ、なよなよして不気味な化粧してさ。しかもあんな下手くそな歌で、デビュー曲オリコン入りなんて絶対おかしいって」


「だから世間様の評価はそうなの!!! こういう風に煌が酷くいうからね、櫂が判断して!!!」


「……俺?」


「そう。こういうのは第三者が判断するのがよろし。家でZodiac聞いてたら、煌が悪口ばっかり言いに来るんだよ!!?」


何か言いたげにむくれている煌。


「そいつら…顔はいいんだな?」


多分――


「うんうん。最近出てきた凄~い格好いい3人組。ビジュアル系だけどね」


煌の嫉妬だ。


よく…考えてみろよ、芹霞。


「櫂なら絶対、彼らの格好よさ判ってくれると思うんだ!!!」


煌が敵視している男を、俺が好意的に思えると?


「櫂なら絶対、俺の気持ち判ってくれると思うんだ!!!」


煌に一票。


芹霞に好かれた"格好いい男"なんて、俺は嫌いだ。



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