恋愛アシスト
………うん。

………まあ。


歴史を知る以上避けては通れない所だよね。

異端裁判とか

魔女裁判とか。

日本だって大岡越前が法律を作る前までの奉行所は問答無用で拷問してたもんね。

真実は綺麗なものばかりじゃないもの。

それを知るのは悪い事じゃないわ。

むしろ知らなきゃいけない事だってあるはずよ。

私だって読んだ事あるもの。

しばらく夢でうなされたけれど。

でも知る事は必要よ。

二度とそんな卑劣な事が世界に起こらないようにとか人間の極限の残酷さを知り奢りに対する教訓にするとか。

うん…深い。

深いわこの人。

よし。

やっぱり声かけよう!!

ばれないように小さく咳払いをする。


んん。

んんっ。

…よし。

い…いざ。


いざ声をかけようとしたその時だった。

彼がぼそっとこう言った。



「……萌え」



………。

……………。

…………………。


私はしばらく時間が止まったあと、くるりと回れ右をし、店を出た。

意識しての事ではないが歩調は速くなる。

なるべく早く、あの彼から遠ざかりたくて。


……『萌え』って

…なんだ。


ときめきだったテンションが一気に大暴落を起こし、私の中には言い知れぬ絶望感が渦巻いている。


…あの状況で

……『萌え』って


……………なんだ。
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