恋愛アシスト
「心臓…ぶちぬかれた」


彼は恍惚とした顔でそう言った。


「こんなに激しい気性の子に愛されたらどんなに気持ちがいいだろうと思った」


……………。


急上昇していたときめきゲージが再び停止し、


「想像しただけでぞくぞくした…」


再び、大暴落してマイナス域まで下降する。


「だから…ねえ」


甘い美声が私を呼ぶ。

そして告げる。



「俺と付き合」

「人違いです」



……遮った。


私は再び回れ右をし、今度は遠慮なくスタートダッシュした。

短距離選手顔負けの美しいフォームを保ちながら疾走する。


…残念だ。

実に残念だ。
あの人。


あんなに格好いいのに性格が残念だ。

ていうか今のは口説き文句だったのか。

愛の告白だったのか。

『クサレ王子』とかぼやいちゃったところに惚れられても困る。

微妙なうえそんな激しさを継続して求められても困る。

ていうかそんなの求めるな変態。


「待って!!」


来るな!!


「な…なに?何が悪かった?俺の何が気に食わない?」


強いて言うならその性質だ。


「そりゃ何回か尾行して君の家まで行ったりしたけどインターホンは控えたよ!?」


ストーキングまでしてたのか貴様。


「尾けてるときに君が怪しんで三回振り返ったら諦めるくらいの常識も持ってるし!!」


尾けてる時点で非常識だと気付け。


「君の情報収集だって盗聴とかそんな犯罪的なことはしなかったよ!?ちょっと君の友人に彼氏ですって嘘ついて教えてもらう…その程度だよ!!」


どうりで最近友人みんなが遠巻きにニヤニヤしてると思ったら…。


「隠し撮りのアングルだってパーフェクトに君の魅力を引き出せるよう細心の注意を払ってるし!!」


褒めろとでも!?


「生身の君とするまではと思って、その写真にさえキスするのを控えてるんだよ!!」


どんな心遣いだ!!


「好きだ!!」


黙れ変態!!


「愛してる!!」


滅びろ!!


私は必死に走りながらそう思った。
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