恋愛ウエディング
新郎新婦のお色直しがやけに長いなと思い始めた時だった。


「ちょっと」


私は背後から低い声に呼ばれた。

振り返る。


「あなたは…」


その人は、義兄になる人の双子の弟である人、健二さんだった。

義兄とこの人もそうだが私と姉も双子。

しかも一卵性双生児。

そっくりなふた組の男女を見た式場の人は、

「途中で入れ替わってもわかりませんね」

なんて冗談を言っていたことを覚えていた。

本当に良く似ているけれど、義兄は人懐っこい柔らかな雰囲気なのに対し、この人はどこか堅くて近寄りがたい。

初対面の時も

「どうも」

しか言わなかった。

結婚するのは兄で、自分はあんたらと関係ない。

そんな感じを、ありありと伝えてきた。


嫌いだ、この人。


……と、思った。


もう二度と話をすることもないだろう。

そう思った人がこんな場所で今、私に話しかけてきている。

その状況が異様に思えた。


「…来てくれないか」


他に聞こえない様に声をひそめるその深刻な様子に私は胸騒ぎを覚え、席を立ち彼についていく。

案内されたのは新郎の控室。

そこには、明るい窓と、大きな鏡と、それに映る困惑顔の会場スタッフたちが待ち受けていた。

…が、新郎が見当たらない。
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