好きとごめんのその先に
「…奏多、毎日迎えに来てくれる前に犬の散歩に行ってるの?」
奏多の足元で尻尾を振る白い子犬が目に入った。
「あ、うん。タロウは早起きでさー。…ていうか、“犬”じゃない、“タロウ”」
「へぇ…」
知らなかった。
タロウ…
そういや最近飼い始めたって言ってたっけ。
「ゆりちゃん、もしかして今日は俺を迎えに来てくれたの?」
「あ…うん。たまにはいいかなと思って…」
「そっか。…でもちょっと早くね?」
「……そう…よね、ごめん」
さすがに早すぎた。
逆の立場だったら、きっとわたしは文句を言っている。
「………」
口を閉じてじっと、奏多の視線がわたしに向けられる。
ドキリと、妙な感じに胸が脈打った。
「待ってて。準備してくる」
次の瞬間にはパッと元の表情に戻った奏多。
タロウを引き連れて、いそいそと家の中に入って行ってしまった。