好きとごめんのその先に
…さっきの一瞬の表情、何だったんだろう。
わたしの心の中まで見透かすような、そんな視線だった。
「お待たせ。行こう」
「あ、うん」
5分も経たないうちに出て来た奏多に、手を引かれる。
…絡んだ左手に、いつもはない違和感。
「…?何これ」
それに気付いたのは、奏多の方が少し早かった。
「…あっごめん…外すの忘れてて…」
奏多から手を離し、咄嗟に指輪を抜く。
今まで忘れていられた程に馴染んだことがなんだか悲しい。
「それがあいつからの婚約指輪ってやつ?」
「…うん…」
わたしの手の中のモノを見つめて、にこりとひとつ笑わない奏多。
「…大変だな、ゆりちゃん」
ふいっと前を向いて、そう言う。
よく思っていないのは、顔と声で分かる。