好きとごめんのその先に
「…ったく。マジであいつ、何様だっつーの」
「婚約者様?」
「やめて」
学校までの行き道、奏多は腹の虫が収まらない様子。
ずっと隣でぶつぶつ言いながら歩いている。
割り切っているとは言え、受け入れているようではないみたい。
「怒らないで。悪いのはわたしだから」
「…あ、ごめん。ゆりちゃんは悪くないよ」
わたしが謝ると、ふと申し訳ない表情になる奏多。
「それより、今日も迎えに来てくれてありがと」
すぐ近くの右腕に抱きついて、にっこり笑って言った。
一瞬驚いた様子の奏多は、怒るのを止めて大きな目をこっちに向ける。
「礼なんか言わなくていいって」
そう言った次の瞬間には穏やかな表情。
ふと目が合って、自然と手が繋がれた。