好きとごめんのその先に
「ねぇ、この指輪、一体いくらするんだ?」
握られた左手を上げられ、薬指のリングを見つめる。
「さぁ…分からないけど、百万できくかな…?」
「…うぇ…」
怒りが収まったかと思えば、今度は現実味あふれる話。
奏多もわたしも呆れ顔。
「エンゲージリングでそんな値段って、次はどうする気だよ」
…次……マリッジリング。
あぁ、いらない…
「こんなの、ただの重荷だよ…」
「じゃあ売っちゃうか?」
「…さすがにそれは良心が痛みます」
「ははは」
売れるものなら売ってやりたいけど、さすがのわたしもそこまで非情にはなれない。
忠見さんの前でだけで嵌める、無駄に高いエンゲージリング。
これはわたしにとって、この世で一番いらないものかもしれない…
すっと薬指から外し、制服の胸ポケットにしまった。