好きとごめんのその先に
「っなんなのもう…っ」
荒い呼吸を整えながら、奏多に文句をぶつけるわたし。
「あはは、ごめんごめん。まさかすぐに発車しちゃうとは思わなくて」
奏多はそう言ってへらっと笑う。
「はぁ?まったく…」
おかげで今の一瞬でどっと疲れた。
髪は乱れるし、ブーツで足は痛くなるし…
「結局女の顔は分からなかったな」
「…そうだね…」
……ほんと、何のために走ったのか…
「まぁいいか。ゆりちゃん、着くまで座っていいよ」
そう言いながら1人分しか空いていない座席にわたしをねじ込む奏多。
「奏多は座らないの?」
「あぁ、うん。俺はいいや。疲れてないし」
1つ空いている向かいの席には座ろうとはせずに、わたしのすぐ傍の手すりにもたれて立つ奏多。
「…ありがと」
「んーん」
小さな声でお礼を言うと、奏多は少し照れくさそうに横を向いた。