好きとごめんのその先に
「今は別の人が住んでるの?」
「…あぁ、そうみたいだな」
玄関に明かりを灯した家を見ながら、奏多とパパの会話を耳にする。
…そっか、もう誰かのものになっちゃったのか。
ママとの思い出、消えちゃったんだなぁ。
「…ねぇ、もう帰ろう」
前にいるパパに向かって言った。
「もういいか?」
「…うん。早く帰りたい」
「そうか、分かった」
わたしの言葉に頷いて、再び車を走らせるパパ。
ゆっくりと、わたしの思い出の場所が遠ざかっていく。
…きっともう、二度とここに来ることはない。
わたしだけでなくパパも奏多も、そう思ったはず。
それでいい。
…もう、ママはここにいないことが分かったから。