好きとごめんのその先に


「会社のことは、父さんたちに全て任せている。…俺には分からない」



広い背中で、彼は答えてくれた。




「…お願い。パパを悲しませないで…」



自分の話ではないと彼は言うけれど、それでもわたしは懇願する。




「夕梨亜が結婚を承諾してくれれば、何も心配することはないよ」



なんて、すぐに返ってきたのは強情な台詞。



他の人を求めておいて何を今更、…とは思うけど、自分だって彼のことを責められる立場じゃない。




「決断するのが早ければ早いほど、みんなが楽になるよ」


「……」



結局、何も答えないのが精一杯の反抗だったり。




…決断が早い方がいいなんて、わたしが一番分かっているよ。



でも容易くそうはできないこのもどかしさが、この人には分からないのだろうか…
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