好きとごめんのその先に
「ゆりちゃーん」
玄関先から、わたしの名を呼ぶ奏多の声。
相も変わらず、近所に響き渡る大声…
「入ってきて」
「はーい、お邪魔しまーす」
窓から顔を出して呼ぶと、わたしの部屋まで上がってきた。
「はい。バレンタインチョコ」
手作りじゃないけど、と言って渡すと、あははと笑いながら受け取ってくれた。
「今年のも、甘いやつ?」
「うん。もちろん」
「へへ、ありがとう!ゆりちゃんも1つ食べる?」
そう言いながら封を開け、個包装のものを1粒、差し出してくれる。
パパも奏多も、優しいな。
なんて考えながら、くすっと笑って受け取った。
「んー、生チョコうめー、とろけるー」
「うん、ほんとだね」
美味しいね、と2人で微笑んで、まるで子供の頃に戻ったよう。
奏多と一緒に食べるから、きっと数倍美味しい。
やっぱり、チョコレートも思い出も、甘い方がいい。