好きとごめんのその先に
ブブブ…
ふと奏多の鞄からバイブ音が聞こえてきた。
やはり、現実はそう上手くはいかないようで。
わたしに目で“ごめん”と訴えて、回した腕を解き、携帯に手を伸ばす奏多。
「…あ、やばっ!」
画面を見て慌てだした。
「数学のノート、貸したままだった!」
「え?」
「ほら、貸した子からメール。ごめんって」
見せられた携帯の画面に、その言葉通りの文章。
差出人が女の子の名前だということに少し引っかかるけど、口にはしない。
「今日宿題出てるんだよな…。しかも明日の授業で当たるし。……最悪だ」
「じゃあ取りに行ってきなよ。待ってるよ」
「え…いいの?」
「うん」
申し訳ない表情の奏多に、微笑んで頷く。
「…っごめん!すぐ帰ってくるから!」
そう言うと、携帯も持たずに足早に部屋を出て行ってしまった。