好きとごめんのその先に


状況をつかめていない忠見さんに、もう一度口づける。



まさかの二度目に、目の前の顔は少し歪んだ。





…そんなことには構わず、わたしは何度も何度も口づける。



初めての感覚に、胸がきゅうっと締まる。




“ファーストキスは奏多と”


10年間、そう思い続けてきたのに。



…こんなにあっさり捨ててしまえた。








「…ん…っ」




突然ふっと、忠見さんの唇から力が抜けた。



途端に捉えられるわたしの唇。




…いつの間にか、立場が逆転。
< 276 / 428 >

この作品をシェア

pagetop