好きとごめんのその先に
「…婚約の話も、俺が父さんに頼んだんだ。夕梨亜と結婚したいからなんとかしてくれって」
「え…」
「どうしても夕梨亜を俺のものにしたくて、父さんの手を借りた。…まぁ親父さんのクビをかけてきたのは想定外だったんだけど」
「……」
「さすがにやりすぎだとは思ったんだが、後には退けなくて…
それなら、親父さんの人生を守るためにも、絶対に結婚しないと、って思ったんだ」
そんなこと……
「…馬鹿だよな、こんなの。夕梨亜が喜ばないことくらい、容易く想像できたのに。
…でも、自分の力でお前を振り向かせる自信がなかったんだよ…」
「……」
テーブルに伏せるように頭を抱える目の前の人。
その角張った手が僅かに震えているように見えるのは、わたしの思い過ごしなのだろうか。
「………ごめんな…」
そう声を絞り出した彼はきっと、苦しんでいる。