好きとごめんのその先に
「ほん…とに…?」
顔を覆ったまま、微かな声で確かめてくる彼。
その手を剥がし、そっと包んであげる。
両手でやっとの大きな右手は、昔よく問題を正解した時に頭を撫でてくれた手だな。
なんて。
こんな時に呑気に、中学の頃の日常が、思い出として蘇ってくる。
そんな思い出がくすぐったくて、自然と口角が上がった。
「今までずっとわたしを見てきてくれてありがとう。心の底から、感謝しているよ」
見て見ぬフリをしてきた、あなたの気持ちに。
「…はは…礼を言うようなことじゃないだろ」
涙を堪えてそう呟いた忠見さん。
わたしに向かって少しだけ、微笑んでくれた。