好きとごめんのその先に
空いた隣
―――
「行ってきます」
日が昇って、いつもの朝。
違うのは、奏多が迎えに来なくなったことと、
「夕梨亜、待って」
「え?……んっ!」
「…行ってらっしゃい」
「…!」
忠見さんに見送られるようになったこと。
昨日で味をしめたと言わんばかりの、朝から不意打ちのキス。
こんなことも、そのうち慣れてしまうのだろうか。
始まった新しい日常に、戸惑いを隠せない。
すっかり馴染んだ学校までの道も、1人で歩くと何だか違う道のように思えてしまう。
あれだけ嫌だった、日常に彼がいることを、許してしまっているわたしは、きっとどうかしている。
…だけど今は少し、彼の優しさに浸っていたい。