好きとごめんのその先に
「……行かないの…?」
消え入りそうな声のエナちゃん。
「……、」
彼女のその質問に、無言で頷いて答えた。
その瞬間、何十メートルも先の男と目が合った。
その時間は2、3秒だっただろうか。
…先に視線を逸らしたのは、わたしの方。
「…行こう、エナちゃん」
「えっ…」
さっと前を向き直し、歩き始めた。
「…っ本当にいいの…?」
数歩遅れて、エナちゃんが追いかけてくる。
わたしと奏多をちらちら交互に見る彼女に、
「もういいの」
そう言った。
「………夕梨亜ちゃん…」
納得いかない様子のエナちゃんは、それでももう、何も言わなかった。