好きとごめんのその先に
「…婚約者は、昔、家庭教師に来てくれていた人。
その人のお父様は、わたしが彼と結婚すれば、パパの会社を大きくしてくれるって言ったの」
分かりやすく、淡々と説明する。
「それって、政略結婚?」
「……ううん」
あがったクラスメイトの言葉に、首を振った。
「最初はそうだと思った。…けれどもそれは彼からの愛だって知って…
……わたしは、彼自身を受け入れたの」
ずっと待っていてくれた忠見さんを、これ以上待たせてはいけないって。
…そう、思うことにしたの。
「……」
「……」
「……」
しんと、教室内が静まりかえる。
みんな、ただの興味で耳を傾けていた話が、こんなに大きなことだなんて、予想もしていなかったのだろう。
“二股をかけた女”だけで終わらなかったことに、困惑している様子。
語らない心の内で、何を思っているのだろうか。