好きとごめんのその先に
過ぎる景色は、昨日まで奏多と一緒に歩いていた道。
昨日よりもまた多く桜の花が咲いている。
「…本当によかったのか?」
「え?」
「忠見さんとの結婚、パパのために我慢をして承諾したんじゃないか?」
バックミラー越しに、パパがわたしを見てきいてくる。
「…まさか。だったら今頃泣いてるって」
…なんて、ワケの分からないことを言って答えるわたし。
「忠見さんって、案外いい人だよ」
鏡越しのパパに向かってくすっと笑った。
「…そうか。…ありがとう」
そう言ったのを最後に、パパはもう何も言ってこなかった。