好きとごめんのその先に


ゆりちゃんのいない卒業式は、行っても意味がない。



自然と足は元来た方へ。




突然帰ってきた俺を見て、母さんは目を丸くしていた。



何か言いたそうだったけど、俺がははっと笑うと、何も言わずに奥の部屋に消えた。



ゆりちゃんの婚約の話を最初に告げた時もそうだった。



少し悲しそうで、でも何も言えないというような表情で。



…もしかして母さんは、こうなることを俺よりも先に知っていたのかな、なんて、根拠もなく思ってみたり。



でも今となっては、そんなのもうどうでもいい。





開けた冷蔵庫には、いつものオレンジジュース。



部屋には、思い出の写真や贈り物。



…俺の家、ゆりちゃんでいっぱいじゃん。






きっと俺は、これからも思い出すんだろうな。



気持ちが繋がったあの日のこと、喧嘩したあの日のこと。


昨日のこと、今日のこと。




あの並木道が、舞い散る桜でいっぱいになる季節がくる度に。
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