好きとごめんのその先に


~♪



「っ!」



躊躇しているうちに、いきなり着信音が鳴った。



タイミングがいいのか悪いのか、奏多からの着信。



…どうしよう。


今ちゃんと話できる気がしない。



…でも出ないと不自然か。



表情は見えないし、分からないかな。




しばらく悩んだ末、ぐっと唾を飲んで、電話に出た。





『あ、ゆりちゃん?いま平気?』


「うん。どうしたの?」


『特に用事はないんだけど、ちょっと声が聞きたくて』


「なにそれ、変なの」


『あはは、ごめんね』



今、電話の奥の奏多は、きっと楽しそうに笑っているんだろうな。



わたしが他の人と結婚させられるなんて、微塵も想像していないに違いない。



そんな奏多の声に、胸がぎゅっと締まる。
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