好きとごめんのその先に
「…奏多くんのことは、手離すなんてことをしちゃダメだ」
「え…?」
「…もっとも、どっちを選ぶか最後に決めるのは夕梨亜自身だがな」
そう言って、パパはふっと笑った。
「…奏多とのこと、認めてくれているってこと…?」
分からなくなって、きいてみる。
パパは、ゆっくり立ち上がった。
「…誠斗くんには、夕梨亜の嫌がることはしないという条件を出している。
…何かあったらすぐにパパに言いなさい」
わたしの質問には答えず、そう言い残して和室を出て行くパパ。
その後ろ姿は、さっき思ったほども小さくなかった。
「…ねぇママ。パパは父親失格なんかじゃないよ。だから責めないであげてね」
くすっと笑い、遺影に向かってそう言う。
“分かってるわよ”とママが笑って見えたのを最後に、線香の火を静かに消した。