好きとごめんのその先に
「…奏多に言ったら、許さないから」
わたしからの、条件。
受け入れたと思われたくなくて、精一杯の抵抗。
でもこんな程度じゃこの人には通じていないかもしれない。
「言うわけがない」
そう言って、忠見さんはふいにわたしの手をとる。
「…指輪、嵌めてくれないのか…?」
「……」
左薬指をなぞりながら言うその声が、耳元を震わせる。
彼が言葉を発する度に背中に振動が伝わって、なんだか変な感じ。
「一応、夕梨亜は俺の婚約者なんだから。」
そう言って彼は、机の上に置いたままの銀をわたしの指に通す。
「……」
冗談じゃないと思いながらも、頷いた。
…なんて重い鉄。
だけど、これくらいならまだ我慢できる。
…それになんだかこの人の知らない部分が怖くて、逆らうことができない。
奏多に心の中で謝り続けながら、忠見さんがわたしを解放するのをじっと待った。