好きとごめんのその先に
パチンと携帯を閉じる音が聞こえたかと思えば。
「夕梨亜を幸せにするのはアイツじゃない。俺だよ」
なんて言葉が耳元に。
…ダイレクトに入ってくるその低い声は、ある意味恐怖だ…
興味もない人に愛を囁かれること程、苦痛なことはない。
もぞもぞと動いた彼に、後ろから抱きしめられる形で全身を包まれた。
温められる体の表面。
ドキドキどころか、寒気がする。
…もし、後ろにいるのが奏多だったら、どれだけ心まで温まるだろうか。
離れられるものなら離れたい。
だけどそんなことはできなくて、寝たふりをしながら朝がくるのをじっと待つしかない。
…わたし、どこで何を間違えたのかな…
どうしてこの人と婚約なんか…―――