好きとごめんのその先に
二つの顔
チチチ……
鳥の声で、浅い眠りから目が覚めた。
いつもより少しだけ早い時間。
枕元にある携帯に手を伸ばし、操作する。
…あれ。
メールの受信箱に夜中のメールがない。
…確かに受信したはずなのに…忠見さんが消したのかな。
幸いわたしの携帯にはゴミ箱フォルダがあるのを思い出した。
普段は滅多に開かないそのフォルダ。
夜中に目を覚ましていなければ、受信していたことを知らなかったかもしれない。
パスワードを入れて開いてみると、1番上に今日になってすぐのメール。
差出人の欄に、葛原奏多の文字。
“おやすみ”と、そのたった一言の文章が、わたしの胸を熱くさせる。
…普段メールなんてほとんどしてこないのに。
わたしが忠見さんと一晩過ごすのを心配して送ってきてくれたのかな。
…ただの自惚れかもしれないけど、すごく嬉しい。