Re:alism
「…ウ゛ェール…」


「あぁ、あの頭にかぶるやつ?」


「うん…あれなら顔隠せるし、新郎の知り合いに見られても恥掻かないでしょ?名前と正反対ーなんて言われないし…」



小さい頃から、そんなこと思ってたの私



「…出たな…ネガティブ美め」


腕をクロスさせこちらに向ける祝詞さん



「出ましたネガティブ美です。」


私はピースしてみせた



「…でもあれ、結局は頭ンとこ上げるから顔見せンだよな?例えば───」



見上げると再び至近距離



「誓いのキスするとき…」


そして、ゼロ距離に



…深い深いキス。



街中なのに周りには誰もいなくて、息が続かなくなるくらい重ね合った


手を回された腰には少しだけ力が入る



───今日は沢山キスをした


それも、いつにも増してドキドキしてる



その後はカラオケで大熱唱し(ほとんど聴く側だったけど)日が沈む頃には電車に乗った



───そして家の前に着いた


「本当に俺ン家と近くなのな…」


私の家を見上げながら微笑している



そういえば祝詞さんに私の家教えるのは初めてだっけ



「…じゃあおやすみなさいっ…今日は楽しかったです!ありが…」


祝詞さんの顔を見上げた瞬間


不意打ちのキス



「…俺も」



そして振り向きもせず、歩き出した



…男は皆、それがカッコいいって思うらしい


それでも



…少しは振り向いてほしいな…



祝詞さんの背中を見つめながら、そう思っていた


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