Re:alism
そして回しかけた時、後ろから大きな手が伸びてきてドアを押さえた。


「…あのさぁ」


「?!」


行く手を阻まれ、挙動不審に慌てだす。



───その時ドアの向こう、遠くの方から誰かの鼻歌が聴こえてきた。


隙間からは、この部屋とは違う光が微かに入り込んでいる。



「警備員だっ隠れろ!」


急に叫び、私を手前から3番目のデスクの下に誘導する。


確かに部外者(しかも高校生)をこんな夜遅くに連れ込んでいるなんて知れたらマズい。


私は正直に隠れた。



────カチャッ


しばらくしてから、警備員と話している声が聴こえた。


それから間もなく出ていった様で、彼が私の前まで来てしゃがみ込んだ。



目線が同じ。



「もーいーよっ。俺、残業常習犯だから警備員もいつも顔合わせしてるしスルー。…残業も仕事の内だから仕方ないけどね」


また、あの笑顔をした


「───大変なんですね…」



確かにこんな所でも(日頃の迷惑メールの恨み)会社は会社


仕事が大変だということは分かった。



…でも、私もまだ高校生


部活が忙しいので、バイトもしたことがない


…何年後かに、私も働くんだ…。


そしてこの会社はその選択肢の中の1つになるのだろう。



私は人の役に立ちたい…


だから絶対ここは選ばないようにしなきゃ。(笑)



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