Re:alism
「いい事と悪い事があるでしょっ」


そんな栃村に少しでも動揺がバレないよう、すぐに手を振り払った



「あれはマジごめんって。何か酔ってるお前見てたら自分抑えられなくて…」


「…だったらこれ以上近付かないで!私に触らないでっ」



隣の椅子に置いていた鞄を素早く取り、出口に向かう



「俺…マジだからっ!初めて会った時からお前のこと────」


後ろから響く声にも足を止めず、私は店を出た




─────好き?


好きだから私を傷付けたの?



心も身体も…



「…何なんだよー…」


最近悩ましいことがあった時


1番に思い出すのはあの人の声…



「祝詞さん…」



低く落ち着いた、透き通るような声


私の名前を耳にすると心から安心感をおぼえる



…今回も

頼ってもいいですか───?



…と言っても今日も残業らしい


「…電話したいなぁ…」



携帯を眺めていると、急に視界から景色が消え真っ暗になった


誰かに目を被い隠されたようだ



「だ~れだっ♪」



明らか、男が無理に高い声を出したという感じだ



でも少しミッキーに似てるかも、と思った


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