Re:alism
それでも声の主はすぐ分かった


「祝詞さんっ」



手が開かれると同時に、視界に入ったのは祝詞さんの笑顔


「よく解ったねーさすが俺の女♪」



またこの人は…。



「それより、何でこんな所にいるんですか?今日は残業って…」


「今ちょい休憩。外の空気を吸おうと思ってねー」



そういえばここ、祝詞さんの会社の前だった


本人が指差した先を見て思った。



「てか美の方こそこんな時間に何してんの?あっもしかして俺に会いに来た?」


満面の笑みで肩に腕を回してきた


「違いますよっ!!話し合いの帰りですーっ」



少しだけ舌を出してみせた


「ちぇっ。…で、誰と話してたの?1人みたいだけど───」



辺りを見渡しながら問われる



「え…と────」



どうしよう…


「────友達ですっ皆の家あっち方面みたいで…」


「そうなんだ?…じゃ家まで送ったげよっか?1人じゃ危ないし」



「大丈夫です!祝詞さんは仕事頑張って下さいっ」


「…ん。じゃ気ぃ付けてな」



…嘘ついちゃった…



…だって男と会ってたなんて口が割けても言えないよ



再び運びだした足が少し重かった。


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