Re:alism
角を曲がればすぐ家だ


すっかり暗い道に、電柱の蛍光灯や家の灯りが点々と存在する。



そんな風景の中思い出すあの言葉…


“初めて会った時からお前のこと───”



…まさかあの栃村が…


冗談には見えなかったし


でも、だからって私をこんな性格にさせた奴を許せるわけがない


ましてや無意識の内に私に触れていたなんて…っ



思い出しただけでも苛立ちが込み上げてくる



そして丁度角を曲がりかけた時、突然誰かに左腕を掴まれた


「ぎゃっ…」


いつも驚かされて奇声を発する時は、大抵祝詞さんの仕業だ



でも振り返ると


「…栃村?!」


さっき別れた栃村が息を切らしながら私の腕をしっかり掴んでいた



「ハァ…は…速いってのお前…っ」


カッコつけた髪型が少し崩れていた



「何?何か用なの?」


──私が人に対してこんな冷たい態度をとるなんて他にあり得ないだろう



「…そうだよ…ちょっと用だよ」


少し言葉を溜めた栃村


そして掴まれていた腕を力強く引っ張られ、そのままキスをされた


「んっ…」


男の力には敵わない


以前と同じく、抵抗も虚しく苦しくて息も出来ない程の時間だった



そしてやっと離れた唇


「…何なの…?この前から何度も無理矢理…ホンット最低────」


「分かってる。…最低でもいい───でもやっぱりお前のこと…」


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