Re:alism
数時間後、会社から帰ってきたお父さんも一緒にご飯を食べてからケーキに火をつけた



音程がバラバラな歌が部屋中に響いて楽しかったし、ケーキも想像以上に美味しかった



「…じゃあ部屋行くね」


食器を片してからすぐ階段を上った


「美──?もう上行っちゃうの?」



お母さんの声を背中に聞きながら部屋を開けた



「…ふぅ」


楽しかったけど…何か少し気まずかった



何かある日にはちゃんと帰ってくるお兄ちゃんと顔を合わすのは正月振りだけど、いつもあまり話すこともなく戻っていくから



今日も…そうなるんだろうな…



───その時、もたれていたドアを誰かがノックした


「…俺だけど…入ってもいい?」



私は驚いて背筋が伸びた



「お…兄ちゃん…」


何の用だろ…とりあえず


「…いいよ」



カチャ


「…美の部屋久しぶりに入ったなー」


「そうだね…」



「…」



会話がもたない



こんな時私はすぐネガティブに考え始めてしまう


「…てか今日はどうして…私のこと祝いに来てくれたの…?」


「そりゃ誕生日だからだろ」


「…本当に?」


「それはどういう意味?」



…ここは本音を…前から疑問に思っていたことを聞くしかない


「…だって…私のこと嫌ってたじゃん」



私は右拳の力を強く入れた



───祝詞さん…私に勇気を…っ


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