約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
そんなふざけたような会話を繰り返して近づいて来た
去り際、小さな声で彼は告げた。
「長州は京から逃げた。
君の思い人も一緒だろう」
そして、また足音もなく姿をくらました。
「行ってらっしゃい。
山崎さん」
誰も居なくなった空に向かって、
小さく言葉を告げる花桜さん。
ねぇ……花桜さん。
彼は貴女にとって大切な人なの?
貴女が彼を見る眼差しが
とても柔らかく、温かく見えるから。
「良かったね。舞vv。
晋兄さんと義兄さんだった?
二人も無事だろうって、山崎さんが。
だから舞も無茶しないで」
花桜さんが小声で他の隊士には聞こえないように
耳の傍でひそひそと告げると、静かに涙を浮かべながら
もう一度、私をギュっと抱きしめた。
そして八月十八日の政変は
その数刻後、静かに幕をおろした。
彼らは、膝を折って自らの藩主を見送ると、
再び、隊列を組んで彼らのある屯所へと帰って行った。
晋兄……義兄……。
待ってて。
私、まだ諦めてないから。
蛤御門の変までの間に義兄が死んじゃう前に、
今度こそ、私が貴方を助けに行くから……。