約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
19.散りゆく紅葉(前編) - 花桜 -
八月十八日の変。
後の世で、そう呼ばれる出来事が起きた
あの日から周囲が慌ただしくなった。
あの日、会津藩を相手に御所の前で暴れた
芹沢さん。
そりゃ、会津藩のやり方は私にとっても
気持ちいいものじゃなかった。
皆……必死に耐えて我慢してたのに……。
なのに、あの人はあんなやり方しか出来なくて。
あの人が調子良く、好き放題してる傍らで、
近藤さんが必死になって、方々に謝罪してる姿を目にとめた。
一触即発状態が常に付きまとう時間。
味方同士なのに……。
それらを重たくみた会津藩から
芹沢さんをどうにかしろとお達しがあったのは、
その直後のことだった。
次第に雲行きが怪しくなる屯所内。
皆、言葉にはしないけど、
ただ濁った空気が漂ってた。
それでも私の毎日の日課は何一つ変わらない。
朝起きて、水仕事。
掃除を終えたら、山南さんを師に剣術。
ずっと重くて扱いづらかった刀も
ようやく自分の思いのままに振り下ろせるようになってきた。
刀と刀が響き合う音が周囲に木霊していく。
腕にかかる圧を感じながら、
受け止めて次に繋げていく。
ただその繰り返しのはずだけなのに、
日に日に、重さを増していく山南さんの刀。
そのかかる圧の重さが私と山南さんの実力の差で、
それが少しずつ伝わるに連れて日々の練習の手ごたえを
感じられるようになっていた。
「今日はここまでにしましょう」
刀を鞘に納めて額の汗を拭った師匠に対して、
その場で正座をして挨拶を交わす。
「あの……。
お茶、お持ちしました」