約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


舞が反応してくれなかったら、
振り下ろさずに、
ちゃんと寸でで止めるんだから。




ゆっくりと木刀を構えて、
打ち込みの体制を整えていく。




舞の方も見よう見まねっぽい仕草で
ゆっくりと私に木刀の切っ先を向ける。





「たぁぁっ」




一歩踏み出して打ち込んだそれをその場で止めようと、
腕に力を込めたときその木刀を払うように、
舞の木刀が答える。



舞の目は道場での練習で全国大会の試合で感じる
気合そのもので。



そんな舞の打ち込みを受けながら、
何故か自分の知ってる舞が帰って来てくれたみたいで
とても嬉しくて。





互いに一歩も譲らない打ち込みは、
時間が経つことすら忘れて、無心に続けて。


それは私の草鞋の鼻緒が切れたのと同時に
両者の勝敗は決まって……互いの剣は間に割って入った
斎藤さんの剣によっておさめられた。




「舞っ」




その場で立ち尽くす舞に、
いつもの練習の最後のように
正座をしてお辞儀をする。




戸惑ったような素振りを見せて、
今も立ち尽くす舞。




「二人の練習。
 私も楽しませて頂きましたよ。

 さぁ、なおしましょう」



鼻緒の切れた草鞋を手に取ると、
山南さんは手慣れた手つきでゆっくりと修理して、
私の前へと置いた。



「有難うございます」



修理された草鞋に足を通すと、
山南さんは何処かへ姿を消していく。


舞もその場所から姿を消して
私もいつもの日常へと戻った。


洗濯をして、
隊士の皆にお茶を出して……。


邸内の大掃除。
床の雑巾がけ。


そんな最後の掃除の仕上げに取り掛かった時、
部屋の中から、物騒な声が聞こえた。




思わず息を潜める私。




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