約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く




「今なら近藤さんはいない。
 新見さんと芹沢さんを殺すなら今しかない」


淡々とした口調で告げられる重苦しい内容。
この声は……土方さん……。


「私も土方くんの意見に賛成です。

 このまま芹沢一派を黙認していても
 壬生浪士組の為には何一つなりません」


えっ?

さ……山南さん?


あんなにも穏やかな口調で私には接してくれるのに、
そこで会話するその人の声は別人のようで……。



「話はつけてます」



次に言葉を続けたのは山崎さん。




『人を殺す?』


人、一人の命をやりとりする話をどうして、
そんな簡単に話せるの?



そんな私の動揺が気の乱れが、
中の人たちに伝わったのか両側の障子が開け放たれて
そのまま首筋に放たれたクナイによって体制が崩れ、
床にひっくり返された体はその場所で身動きが取れないように
はりつけられていく。



「花桜ちゃん。
 立ち聞きはアカンよ」


身動きのとれなくなった私の体。
今もバクバクと拍動を高めて暴れだした脈拍。


「山崎、山波を中に入れろ」



土方さんに言われるままに、
山崎さんは私を張り付けたクナイを引き抜いた後、
その体を部屋の中へと抱きかかえて部屋の真ん中でおろした。



今もクナイの恐怖から立ち直ることの出来ない私に、
更に言葉は続けられる。




「また……貴女でしたか?

 山波くん……」



穏やかな口調なのに、
目が全く笑ってないその声で語りかけてくる山南さん。


その声に過剰に反応して硬直する体。



「山波。
 お前は俺たちの話を知ることとなった。

 知らなければ、もう少し生きられたものを。
 知られたものを見過ごして生かすことは出来ない。

 俺は……壬生浪士組をこんなところで
 終わらせるつもりはないからな。

 かっちゃんに……」



そう名前を呟いたまま、
拳を静かに震わせる土方さん。



「山波くん。

 君は知らなくていいことを知りすぎました。
 貴女は今、選ばなくてはなりません。

 今、この場で私たちによってその命を絶たれるか、
 この先の未来を私たちと共に歩くか……」




ゆっくりと告げられた
突然の命の宣告。
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