約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
現代から過去にとぶ物語の恋愛シュミレーションゲーム。
私もいろんなゲーム楽しんだことあるよ。
でもその物語の中の主人公は、
すぐにその時代の人たちと仲良くなって、
その世界の歴史を大きく変えていく。
信頼も絆も勝ち取って名実ともに、
伝説になって恋に落ちて。
だけど……そんなに都合よくいかないよ。
この世界の人間で私が唯一、心を許せるのは鴨ちゃん。
そして鴨ちゃんが信頼してるお梅さん。
新選組のメンバーだって、
名前は知ってる。
だけど……その人たちを憧れる時代は終わったの。
その人たちは……今の私が大切な、
その人の命を奪う人なんだから。
……どうしたらいいのよ……。
何も出来ないけど……何も出来ないなりに……
私は鴨ちゃん……貴方に何をしてあげれるの?
「瑠花、どうした?
そんな思いつめた顔して」
後ろから降り注ぐ優しい声。
「……鴨ちゃん……」
その手は、安心しろっと語るように私の頭にポンと降り注ぐ。
「……瑠花、笑ってろ……」
そう言うと、そのまま盃を私の前へと差し出す。
鴨ちゃんの盃にお酒をゆっくりと注ぐ。
一人静かに飲み続ける鴨ちゃんが、
その盃を私の方へと差し出した。
「えっ?」
戸惑って答えると鴨ちゃんは、
その盃を私の手の中へと握らせる。
「一杯くらいいいだろ?」
そう言いながら、
盃に注がれたお酒。
両手の中にすっぽりと納められた、
盃を黙って見つけて、鴨ちゃんをじーっと見つめる。
「瑠花、飲んでみろって」
鴨ちゃんの言葉に背中を押されるように、
一気に盃の中身を口の中に流し込む。
途端に麹酒独特の酸味が口の中に広がる。
味わうなんて余裕なくて、
一気に飲み下すのがようやくで……。
必死に飲み下した後、
お茶を飲みに駆け込む私を鴨ちゃんは、
楽しそうに笑って眺めてた。
お梅さんから、お茶を貰って一気に飲み干すと
お梅さんもまた大きな声で笑って。