約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
「……そんなのないよ……。
そんなのないよ……」
泣き崩れて叫ぶ私を鴨ちゃんは無言で抱き寄せる。
その後ろからはお梅さんの手が、
ゆっくりと添えられて、背中をさすってくれる。
この温もりも……今日までなんて……。
「瑠花、お前には手を出さねぇように言ってある。
お前は今日は隣の部屋で寝ろ」
あの政変の後から、ずっと鴨ちゃんの部屋で、
隣に布団を敷いて眠ってた。
「いやっ……。
鴨ちゃん、今日も……」
ようやく止まりかけた涙がまた流れ始める。
「駄目だっ。
瑠花、お前は今日は一人で寝ろ。
生きて、見届けろ。
お前は、こんなところで死んじゃいけない。
生きて帰るんだろ。月へ。
違うか?」
そのまま鴨ちゃんに腕を掴まれて、
自分の部屋へと連れて行かれる。
灯りのついていない部屋。
ぺたんこの布団を被って、
ずっと震えながら泣き続けた。
……鴨ちゃん……。
それからどれくらい時間が経っただろうか?
感覚すらも定かじゃない時間。
外からは、降り出す雨音。
季節外れの……雷もなり始めて……
震え続ける拳を必死に握りしめた。
ふと、周囲が騒がしくなって
刀と刀が打ち合う音が、耳に届く。
二階から慌ただしく、
駆け下りてくる複数の足音。
私の部屋に近づいてくる小さな足音。
「瑠花っ!!。
瑠花、居るんでしょ」
聞こえた声は……花桜。