約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
「お前さぁー。
やっぱ、あの日からおかしいぞ。
ちゃんと病院で精密検査して貰えよ。
倒れたショックで、頭とか打ったんじゃねぇのか?
ほらっ、立てよ」
そう言うと、敬里は私が立ちやすいように
体を支えて手伝ってくれる。
敬里は……二人を知らないこと以外は、
あの時と変わらないままだけど二人を知らない敬里と、
この場所に居るのが辛かった。
敬里が私を気遣いながら、
自宅へと歩いていく。
「なぁ?
花桜、どうしたんだよ。
さっきから険しい顔ばっかしてる」
「…………」
敬里はそう言っても、
私には何も続けられないよ。
舞と瑠花はちゃんと存在する。
だけどこの世界に二人は居ないんだもの。
どうしたら、私は二人を助けてあげられるの?
どうしたら……?
最初に居た場所は、この世界に良く似ていた、
三人が居た世界。
次に居た世界は……幕末。
幕末の世界は決して楽しいことばかりじゃなかったけど、
精一杯、生きてた。
そして……あの日……。
芹沢さんが殺される運命の日。
私は瑠花を助けたくて、必死に雨の降る中、
瑠花の元へと駆けつけた。
瑠花と共に、その場所から逃げ出してる途中、
敵が現れたんだ。
刃物がキラリと光って、私の方に迫ってきた。
だから……反射的にその刀を逸らした隙に
相手の体の中へと刀を突き刺した。
肉を突き刺した感触が、
今も……この手にはリアルに残ってる。
突然、震えだした右手を止めるように
左手をゆっくりと押さえつける。
震える体を、必死に止めたくて身を縮める。
……私……殺したんだ……。
山南さんから貰ったあの刀で。
私……人を殺したんだ……。
自らの手で、その人の命を奪ったんだ……。