約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
26.縮まりゆく距離? - 瑠花 -
何時ものように、鴨ちゃんとお梅さんのお墓を
訪れては手をあわせる毎日。
なのに……何時の間にか私の傍には、
あの沖田総司が付き纏う。
時に……町に連れ出して気分転換させてくれる。
言葉こそ、まともに交わせないでいるけど……
今では……あんなに毛嫌いする気持ちも、
憎む気持ちも薄らいでた。
そう……総司を見つめて思い出すのは……
あの寂しそうな瞳。
どうして彼は、あんな瞳を浮かべたのか
鴨ちゃんを殺したことを憎むよりも、
今の私はそっちの方が気になって仕方ない。
私にとって、鴨ちゃんは凄く優しかった。
だけど……他の人の目に映る鴨ちゃんは
私が知ってるものと違った。
だからこそ……後世の歴史でも、
鴨ちゃんの扱われ方は散々だった。
だけど……この新撰組の中で私に近い感覚で鴨ちゃんを
感じていた存在がいるとしたら多分……物語の中で、沖田総司。
私が憧れた存在。
でも……この世界で彼と鴨ちゃんが
交流があったのかどうかなんて私はわかんないよ。
やっぱり私の視野は狭すぎる。
この場所に来て、鴨ちゃん以外を見ようとしなかった。
知ろうとしなかった。
でも……目の前の、沖田総司に鴨ちゃんとの関係を
ストレートに聞けるほど私は仲良くない。
今の私は、無言で私の背後を付きまとう
沖田総司の気配を感じながら
その時、その時の時間を過ごすだけ。
そして……お墓の前、ゆっくりと手を合わせて終わった体を起こして
くるりと背後に振り返り、当たり障りのない言葉をかける。
「何?」
私が声をかけたからか、一瞬、戸惑ったような、
驚いたような幼さの残る表情を浮かべる沖田総司。
でもその表情は、いつもの何を考えているかわからない表情へとすぐに変わった。
「今、近藤さんが山波が見つかったって……」
そう小さく呟いた彼の声は、
今までは違って、勢いがなくて……。
「えっ?ホント?
花桜、見つかったの?
帰って来たの?」
声も高らかに切り返すと沖田総司は、
やっぱり少し驚いたような表情を浮かべて静かに頷いた。
「有難う。教えてくれて」
口早にそう言うと、
慌てて邸の方へと慌ただしく駆け出していく。