約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
28. 山南の血を継ぐ者 - 花桜 -
戻ってこれた。
山崎さんの顔を見た時、
正直心からホッとした私が居た。
この世界は私が住み慣れた世界のように平和じゃない。
それでも何時の間にか、この場所がこんなにも
ホッと出来る場所になってた。
その事実に自分自身が一番びっくりしてる。
帰ってきたら瑠花が沖田さんと一緒に居る姿を見掛けた。
舞だって斎藤さんと一緒に居る時間が長くなってるみたい。
帰りたい。
それだけを願い続けてた私たち三人それぞれの時間が、
この世界(ばしょ)で動き始めてるのを感じた。
……私も……。
屯所に戻って来た途端、いつもと同じ日常が始まる。
朝、起きてすぐに朝餉の準備。
「井上さん。
おはようございます」
すでに火を起こしてくれてる、
隊士の一人、井上源三郎さん。
穏やかな微笑みは何処か安心感を与えてくれる。
この人が居るだけで空間がほわっと柔らかくなる。
「おはよう。
山波くん、神隠しから帰って来たばかりだ。
今日くらい、ゆっくりと体を休めればいいだろうに」
「大丈夫です。
私もここに戻って来たんだもん。
やることはきっちりしますよ」
にっこりと笑い返して着物の袖を腕めくり。
たすき掛けして朝食の準備に取り掛かる。、
一時期より隊士の人数増えたんだよね。
「おはよう、花桜。
おはようございます、井上さん」
姿を見せたのは舞。
「花桜、屯所内の床掃除終わったからね。
流石の私も、もう慣れたよ」
「舞、アンタこの間熱だして倒れたんだから
無理しないでよ」
「大丈夫大丈夫。
ちょっとね……最近、夢見が悪いだけよ。
あんな苦い薬湯、もう絶対に御免なんだから」
舌をチロっと出しながら、苦そうな顔をして見せる舞。