約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く



「大丈夫?
 斎藤さんに、やられちやったみたいだけど?」

「えっ?誰がやられたって?

 ご希望なら今からもう一戦してきましょうか?
 私の強さ、証明してみせますよ」



なんて、サラリ小悪魔の笑みを浮かべる。



「あっ、大丈夫。

 総司が強いのは出会った時から立派に証明されてるから」





貴方が強いのはもう十分に伝わってる。



その強さの中で、貴方が鴨ちゃんから
託されたものがあることも。




鴨ちゃんとお梅さんが居なくなって、
独りになると思ってた。


だけど……こうやって総司はこんな私に寄り添ってくれる。



今は一人じゃないって、強く思わせてくれるから。




「あぁ~沢山遊んだらお腹がすいちゃいました」




そう言いだすと、自分の胸元からお金が入っているだろう巾着を手に取って
重さで中身を探ってるような仕草をする。



「これなら少しは食べられそうですね。

 他の人には内緒ですよ。
 近藤さんがお団子代くれたんです」





そんな感じで声を潜めるあたりも
やっぱり幼さを感じられる部分で。



そう言う見たことがない一面に気づかされるたびに
心が弾んでる私。



断りを貰って、屯所を出ると二人並んで甘味処へ。
そこでお団子を注文すると美味しそうに頬張る。


私が一本食べてる間に、三本くらい食べ終わってる勢いの
総司の食べっぷりにポカンとしながら見入ってしまってる。



「瑠花さん、一本しか食べてないじゃないですか?
 はい、最後の一本になっちゃいましたがあげます」


お皿からつまんで食べかけた団子を口に入れる寸前で止めて、
にっこりと笑って私の前に差し出す。



「有難う」



そう言って、受け取った瞬間
とても悲しそうな表情をする総司。



私は、いじめっ子か?




そんな総司を玩具に楽しんだ後は、
一口だけもらって総司に返す。



「いいんですか?」



お団子を前にした途端、
またキラキラと輝きだす目。



ゲンキンだね。



これが……初対面のあの時、
『殺すよ』って冷酷な言葉を投げつけたあの総司なんだから。



全てをきれいに食べ終えた総司は、
お勘定を済ませて店の外に出た。



ゆっくりと日が高くなっている京の町も、
夕焼けに包まれようとしていた。



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