約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
30.久しぶりの再会 - 舞 -
新選組の屯所で暮らす生活。
その生活が今の私にとって当たり前のように
なりかけていたある日、その日は突然訪れた。
「加賀さん、小さな子供が表に」
そう言って屯所前を守る隊士の一人が
庭掃除をしていた私に声をかけた。
今までならあり得ない。
なのにここの生活に馴染みすぎた私には、
こうやって隊士たちも部外者扱いではなくて、
ここに生活する仲間として受け入れてくれている気がした。
そう……仲間……。
だけど私には忘れてはいけない二人が居る。
晋兄と義兄……二人は何処にいるの?
心に思い続けるのは、
私の大切な二人の無事……。
*
……そう……
彼らを……守りたいから、
大切な人を守りたいから……
私は……この場所に居るのだから。
*
心の中、まるでもう一人の私が
そこに居るように湧き上がってくる言葉。
意識の奥に引きずられそうな感覚に、
頭を振って気を紛らわせると
そのまま箒を壁に立てかける。
「すいません。
今行きます」
そう言って屯所の入り口の方へと向かった。
屯所前に居たのはまだ小さな子供。
その子供は当然ながら、
私が知る由もない存在だった。
「お姉ちゃんが舞姉ちゃん?」
訪ねてきたのは
兄妹の関係らしい子供が二人。
大切そうにお団子を抱えて嬉しそうに
笑う妹っぽい女の子。
お兄ちゃんらしい男の子が
そう切り出す。
「えぇ。
私が舞よ」
屯所内に居る隊士たちに会話が聞かれてもいいように、
当たり障りのない言葉を切り返す。
「今日、お使いに来たんだ」
「来たんだ」
兄の言葉を真似るのが楽しい妹。
「これ、兄ちゃんから預かってきた。
舞姉ちゃんは読んだらわかるって」
そう言って手渡されたのは小さく折られた文。
差し出されたそれをゆっくりと受け取ると、
にっこり微笑み返す。