約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
「何も隠してません。
ただ紙を燃やしただけ。
土方さんもご存じのとおり、
私も瑠花も花桜も、他の時代からここに来たの。
向こうに帰って勉強が追いつけなかったら
どうしてくれるの?
一日一日、勉強しなかったら単語も漢字も忘れてしまうの。
競争社会生き残れないの。
その為に勉強して何処が悪いの?
だけど未来のものなのよ。
この時代には本来使われてない知識の勉強。
証拠隠滅に燃やすしかないでしょ?
この時代には残しちゃいけない情報なんだから」
ムキになって言い返す私。
嘘だけど嘘じゃない。
だけど義兄からの手紙と待ち合わせ場所を
知られるわけには行かないから。
そして私にはやりたいことがある。
*
『……そう……。
何処かで歴史を変えたいの。
もう悲しまなくていいように。
泣かなくていいように。
ただ……歴史を変えたいだけ』
まただ……。
心の奥底から湧き上がるもう一つの声が
私の心とシンクロしていく。
- 回想 -
瞼の裏側に焼きついたように流れるのは……
いつかの見た夢。
殺される義兄。
『いやぁ~』
真っ暗な暗闇に包まれたその場所に響く叫び声。
その隣には斎藤さんがいて足元には血を流して倒れている浪人。
その人の傍で、ゆっくりとお腹に手を当てて
微笑む……存在(ひと)。
……あれは、私……。
でも次の瞬間……晋兄も義兄も、
この場所にいる人たちも……真っ赤な血に染まって倒れてしまう。
……いやっ……。
こんな最後は、もういらないから。
逃げたくても逃げ出せない映像の恐怖。
気を紛らわすために頭をどれだけ振っても
逃げ切ることなんて出来なくて私の意思を無視して
次から次へと瞼の裏側に浮かび上がっては消えていく。
「いやっ、もうやめてっ!!
私をかき乱さないで」
そんなな言葉をその場で罵りながら
私の意識はまた沈んでいった。
目が覚めたら……自分の部屋の布団の中に
居るみたいだった。
誰が連れて来てくれたんだろう……。
確か土方さんに疑われて。
まさか、土方さんが?