約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く

未来も歴史もどうだっていい。


ただ大切な人を守りたいだけだから。
  

泣き崩れた私に、義兄は刀をおろして
ゆっくりと肩に触れた。





「舞、君が何を言おうと僕は僕の意思を変えることはないよ。

 例え、それがどんな結果であっても。
 僕の誇りは、そこに刻まれているから。

 舞……覚悟は出来てる。

 京に来る前に、一生分の雑煮は食べてきたから」




京に来る前に一生分の雑煮を食べてきた。


そう言った義兄の言葉は裏を返せば、
もう死ぬ覚悟はとっくに出来ていると宣言されたことと同じで。
 

その言葉に何も言い返せなかった。




「舞……倖せにおなり……」  



義兄は、そう言って私の前から姿を消した。


私が義兄と言葉を交わした最後の夜。


どれだけ強く望んでも、未来も歴史も
簡単に変わってくれない。




この時代を生きる強い力が、未来からきた小さな力の言葉なんて
全て飲みこんでしまうようで。










「帰るか」






そう言うと、
斎藤さんは私をゆっくりと抱え起こした。





「あっ……の……。
ここの人たちは?」


「後は土方さんに任せる。
 山崎君が伝達に行ったはずだ」




私は斎藤さんに支えられるようにして、
その宿を後にした。





真っ暗な夜に、時折ふく生暖かい風が
不気味な夜だった。





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