約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
悲しい別れが訪れることを知りながら。
瑠花と沖田さんの姿が見えなくなると、
井戸から水をくみ上げて、
桶の中へと注ぎ込む。
そこに手ぬぐいを付け込んで、
ギューっと絞ると、雑巾がけを始めた。
床が一瞬の湿気を含んで乾き始めた頃、
稽古を終えた隊士たちがぞろぞろと
姿を見せ始めた。
さてっ、朝ごはんの手伝いしてこなきゃ。
桶と手ぬぐいを片付けると、
朝ご飯を並べる手伝いをする。
雑巾がけを終えて、広間に戻った時には
瑠花も手伝いに参加していた。
「ありがとう、花桜」
「ううん、舞こそ有難う。
瑠花、おはよう」
「おはよう、花桜。
あっ、後お汁入れるだけだから。
花桜、これ配ってよ、順番に」
指示されるままに、
机の上に並べられる朝食。
・ご飯
・お汁
・お漬物
・焼き魚
豪華すぎる食事とは言えないけど、
それでも十分、豪華なご飯を
私たちは食べられてるんだと思う。
全てを並べ終えた後、
隊士たちが食事を始めたのを見届けて、
お膳を二つ抱えて、広間を後にする。
広間を出て山南さんが療養している
奥の部屋へと向かう。
「失礼します。
山波です」
お膳を床に置いて、
声をかけるものの中からの声は聞こえない。
ゆっくりと襖に手をかけて、
開けると布団の上で起き上がって、
ボーっとしてる山南さんの姿を見かけた。
「おはようございます。
朝餉をお持ちしました」
そう言ってゆっくりと部屋の中に入ると、
山南さんの近くにお膳を置く。
そしてその向かい側には、
自分のお膳もセットする。
一日中、布団の中で伏せることがなくなった
山南さん。
熱に魘されることもなくなった山南さん。
だけど……一日中、
こうやってぼんやりと過ごすことが多くなった。