約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く
未来を伝えよう。
これから起こる出来事を
何もかも話してしまおう。
少しでも悲劇を回避できるように。
握りこぶしを作りながら
覚悟を決める。
後は……剣の嗜みがある親友二人に、
託すことしか出来ない。
「花桜、入っていい?」
花桜の部屋の前、外から声をかける。
「瑠花、いいよ。
入って」
部屋の中に入ると、花桜は刀の前で姿勢を正して
目を閉じていた。
視線の先に、丁寧に置かれているのは
花桜の一族の家宝。
「花桜……」
思いつめたように、
その剣をじっと見つめる花桜。
多分、思い出してるんだね。
私を守るために……
初めて人を斬ったあの日を……。
ただじっと見つめながら、
自らの覚悟を受け入れようと
葛藤しているように見えた花桜の手に
私の手をそっと重ねた。
「花桜……。
花桜は間違えないよ。
花桜が剣を振るうのは、
心から大切な人の為。
あの日、私の為に剣を振るっとくれた
花桜の痛みは、私も一緒に背負うから……」
重ねた手のままに、
二人でゆっくりと家宝の剣へと手を伸ばす。
戸惑ったように、
指先を何度かまげて躊躇いながら
私を見つめて、
力強く剣を手にした花桜。
花桜はその剣を、
ゆっくりと自分の体に引き寄せて
定位置へと差し込んだ。
「私も覚悟を決めなきゃ。
覚悟、って難しいよね。
決めたつもりになることはとても簡単なのに、
いざ決めるとなるとなかなか思うように心がついていかない。
でも……最初は嫌だったこの世界なのに
今、私……ここに居る人たちを守りたいって思うんだ。
守りたいって言っても、ここにいる人たちの方が、
私よりも何倍も強いと思う。
人、一人だけ殺してパニックして怯えて震えてた私なんか、
邪魔にしかならないと思う。
それでも……傍で見届けたい」
そうやって私に告げる花桜は、
少し大人の階段を登ったような気がした。